こんにちは。佐賀の女性行政書士、天山です。
前回までは以下の二つの遺言についてお伝えしました。
自筆証書遺言http://ameyamaeriko.net/archives/70
公正証書遺言http://ameyamaeriko.net/archives/81
本日は、その他の遺言についてお伝えいたします。
秘密証書遺言
秘密証書遺言の特徴は、作成者本人以外に、生前のうちにその内容が知られることがないということです。
作成した遺言を入れた封筒などを公証人へ提出し、中身が遺言書であること、作成者は誰なのかなどの確認を行った後、遺言者・公証人・証人2人以上が封筒等に署名・押印をします。
公正証書遺言に比べれば、比較的費用は低額で作成できるかもしれませんが、争いを予防するという点においてはあまりお勧めできません。
遺言書を書く段階で誰も関与しないため、自筆証書遺言と同様、せっかく遺言書を書いたのに、いざ相続が開始したら要件を満たしておらず無効である場合もあります。
また、有効な遺言であっても、内容に不備があり結果的に争いが起きてしまうこともあります。
誰にも遺言の内容を知られたくない場合には、秘密証書遺言を作成するという選択もありますが、公正証書遺言でも内容が外部に漏れる可能性はほぼないと言えます。
このような点からも、私としては公正証書遺言が紛争予防の安全性を高める手段としては最も有効であると思います。
危急時遺言
ここから先は、特別方式の遺言と呼ばれるものです。
①死亡危急時遺言
病気等で死期の迫った方が、証人3人の立会いの下口頭で遺言の内容を伝え、これを承認の一人が書面に書きます。内容を読み聞かせるか閲覧させ間違いないか確認した後、証人が署名・押印します。
病気等により、自筆証書遺言の作成が困難で公正証書遺言を作成する時間的余裕もない場合に使われる方式です。
特別方式の中では、死亡危急時遺言は最も利用例が多いと思います。
②船舶遭難者遺言
乗船していた船舶が遭難した場合に、証人2人以上の立会いの下口頭で遺言をするというものです
③伝染病隔離者遺言
伝染病などのため、行政処分で交通を断たれた場所にいる方が、警察官1人及び証人一1人以上の立会いで遺言書を作成するというものです。
④在船者遺言
船舶に乗船中の方が、船長又は事務員1人及び証人2人以上の立会いの下で口頭で遺言をするというものです。
以上の4つが特別方式の遺言と呼ばれるものです。
このように、特別方式の遺言は自筆証書遺言や公正証書遺言よりもかなり簡易的な方法で作成されます。それゆえ、のちにその遺言の効力について争いが起きやすいと言えます。
遺言を書くなら元気なうちに
これまでこのブログ上で何度も書いてきましたが…
遺言の最大の役割は争いを防止するということです
様々な場面で特別な方式で遺言を残すこともできますが、安全性の高い遺言を残すことは難しいと言えます。
遺言の効力に争いが持たれるような状況になってから遺言作成を始めるより、思い立った時に作るのが一番良いのです。
また、遺言はお金持ちや仲が良くない家族だけに関係のあるものではありません。
家族が亡くなって悲しみに暮れているときに、葬儀や相続手続に追われるのは、残される家族にとっては心身ともに大変な負担を負うことになります。
そんな時に遺言が残されていると、家族はそれに従い手続を行うことが出来、相続手続がスムーズに行われれば争族の防止にもつながります。
これを機会に、残される家族が仲良く暮らしていけるように、人生最後の贈り物として遺言の作成を検討してみてはいかがでしょうか?